山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     「長寿とガラパゴス化現象」

2010年01月01日

新しい年を迎え、今回は人間の健康と長寿、ガラパゴス化現象など、われわれの身近な問題について所見を述べてみたいと思う。

現在、世界の人口は約68億である(以下は米国勢調査局、国連統計のデータ推計を参照)。世界の人口は1分に140人、1日で20万人、1年で8000万人が増えているそうだ。つまり1年で6000万人が死亡して、1億4000万人の命が誕生しているという。

下記の10か国が全人口の60%を占めている。
①中国(13億3000万)、②インド(11億4000万)、③EU27か国(4億9000万)、④アメリカ(3億)、⑤インドネシア(2億3000万)、⑥ブラジル(1億9000万)、⑦パキスタン(1億6000万)、⑧バングラデシュ(1億5000万)、⑨ロシア(1億4000万)、⑩ナイジェリア(1億4000万)、ちなみに日本は11位で、1億2700万人だ(09年初期のデータ)。

平均寿命の長い国(06年WHO世界健康報告の04年データ)は、1位が日本、モナコ、サンマリノが82歳でトップ。次いでオーストラリア、アイスランド、イタリア、スウェーデン、スイスは81歳である。一方最下級国は190位のシエラレオネ(39歳)、191位のスワジランド(37歳)194位のジンバブエ(36歳)である。

長寿の秘訣は免疫力アップ

厚生省の2005年簡易生命表によると、日本女性の平均寿命は85.49歳、男性が78.53歳となっている。日本人の平均寿命は明治13(1880)年に30歳を超え、大正時代(1912~1926)に40歳を超えたばかりであった。現在の最高齢は愛知県の山中かくさんが明治27(1894)年生まれの113歳である。一方男性の史上最高齢は慶応元(1865)年生まれ、鹿児島県の泉重千代さんの120歳だったが、1986年に亡くなっている。

これら長生きされた方の意見を総合すると下記の通りであった。①好きなことをしてくよくよ悩まない、②気持ちを大きく広く持つ、③睡眠をたくさんとる、④バランスのよい食事、野菜を多めに摂る、⑤食事量を少なくしてよく噛んで食べる、⑥軽い有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳)をする、⑦年齢とともに頭を使う習慣や趣味を持つ、⑧禁煙、深酒をやめる、などである。

人間には免疫力があり、病気と闘う力が備わっている。身体各部の粘膜や分泌物がバリアーになって、細菌や異物が入るのを防ぐ。健康で長生きする人たちは、体に侵入したウイルスや癌の悪性細胞を撃退する免疫の主役である白血球が、肉体をガードしている。

健康を意識する

自信過剰な人ほど、自分だけはガンにならず長生きすると考えるものだ。しかし夜更かしや不眠、疲労が溜まると体内の細菌やウイルスが活動しやすくなり、免疫力を食いつぶす。免疫力が弱まれば、体内に潜在するガン細胞の増殖と活動が活発になる。

我々の体は常に病原菌と戦っているが、ウイルスや大量の菌が流入すると鼻水や咳、発熱などが起こり、病原菌との闘いだ。免疫力で勝つには栄養を摂り、よく体を休めるのがよい。そして普段から体力を気遣い、体力増進に努めることが何よりも大切なのはいうまでもない。

「人生は闘争の過程である」とはドイツの著名な哲学者の言葉であるが、国や企業、個人を問わず、人生すべてが生きるか死ぬかの闘いの連続である。長生きで健康であるには、常に自らの体力を高める訓練を怠らず、病気を未然に防ぐ日頃の注意が肝要である。

真面目と不摂生の違い

人間の長生きは、普段からの積み重ねによる結果物に他ならない。若い頃は不摂生な生活も平気であるが、そのツケが50代前後にやってくる。かつて一世を風靡した大スターたちも、早死にしている人が多い。石原裕次郎、勝新太郎、中村錦之助、水原弘たちは付き合いのよさから暴飲暴食や不摂生な生活に走り、寿命を縮め死に至ったと聞いている。

毎日の積み重ねが晩年の命運を決すると言われるが、健康によいことを真面目に継続すればよいことが続く。肉体的、精神的に悪い習慣を続ければ、悪い結果を招くしかなかろう。たとえ地味であっても、毎日同じことを同じ時間に真面目に続ける生活と、健康的に生きるよう気遣うことが、長生きの秘訣ではないか。つまり、自らの肉体を大切に扱うということだ。

日本人は農耕民族であるから、毎日こつこつと田畑を耕して農作物を作り、日本民族の長い歴史を継承してきた。日本民族が優秀といわれる理由は「まじめで勤勉」の一言に尽きよう。しかしこれからは、あらゆる病原菌を撃退する免疫力が必要だ。

中流意識から貧困層へ

日本は島国であり、大陸から隔絶された環境の中で、独自の伝統・文化を育み、独自の進化を遂げてきたのである。日本経済は独自の精密な技術、繊細な文化をうまく活用して見事な産業発展を果たしたといえよう。

われわれは高い技術力で世界基準を作り優位に立ったと思っていたが、グローバルスタンダードの導入や外来企業の進出・攻撃にはきわめて弱かった。新しい世界基準による仕組みとシステムを米国から押し付けられたが、抵抗力の弱い日本は、グローバル化という名の細菌の下に膨大な国富を吸い取られたのである。それどころか国民は、中流社会から下層社会へと突き落とされたといえよう。

ある時期、日本経済はグローバルスタンダードという外来の攻撃に抵抗する免疫力を持たず、あらゆる業界が猛毒に侵される様相を呈していた。昨年1人あたりのGDPは18位、株価騰落率は世界52か国・地域中51位、国際競争力(IMO)も4位から24位に転落した。いつの間にかわが国は世界から後退し、たくさんの弱者が誕生している。

ガラパゴス化現象

南米エクアドルから900㎞離れた太平洋上の沖合にあるガラパゴス諸島では、ガラパゴスゾウガメ、ペンギン、イグアナなど、独自の進化を遂げた固有種が生息している。しかし外来種が入り込んで以来、多くの固有種が死滅した。これを「ガラパゴス化現象」という。

日本経済もこの「ガラパゴス化現象」で、業界再編・企業の体質改善などを余儀なくされている。さらに国家や企業のみならず、人間の健康上にも著しい変化が連続して起こっている。世界の標準や市場原理から立ち後れることで、気がついたときには日本だけが取り残されるという現象だ。

取り残された企業は死滅するしかない。しかし日本民族が、これらの外来種をも飲み込んで復活するのは時間の問題であろう。日本の底力はそんなにやわなものではないと思いたい。

筆者は「心、能、体」という言葉を大切にしている。人間には心、能力、体力が必要だ。3つがバランスよく均衡を保つことで、人生を長く有効に活用することができると思っている。こうした人間の基本的な防衛力、免疫力の整備を怠らず、外来種を駆逐すべきだ。

年齢とともに頭を使え

人間の肉体は60歳を境に急速に衰えるが、年齢とともに経験や見識が生かされて逆に知力は開花しよう。人間の細胞数は60兆個で、毎日15兆個が再生されている。脳細胞の数は大脳に140億、小脳に1000億で、さらに細胞をつなぐシナプスが100兆もあるという。脳は年齢に関係なく、使うほどシナプスが増えて頭がよくなると聞いている。一方肉体は、管理によって健康を維持することができるが、年々衰えは隠せない。

人の上に立つ者は、毎日勉強を欠かしてはならない。勉強によって、見たり聞いたり感じたりすることが大切だ。そしてたくさん経験したことを人に話し、頭や口をたくさん動かせば活性化しよう。勉強しない人は、毎日急速に衰えていくのがよくわかる。

世界の動きをはじめ、自分の知らない教養を高めることで、白血球が増え免疫力が強くなる。つまり、いつまでも若々しく見える人は、他人から多くを学び健康管理を怠らない。仕事もできるうちはやるべきであるが、いつも青白い疲れた顔をして、仕事をやり過ぎるのは健康に悪い。

少子高齢化と地球温暖化問題

世界の人口はどんどん増えていると前述したが、我が国の少子高齢化と人口減少は深刻である。2055年の推計によると、平均寿命は男性83.67歳、女性は90.34歳だが、合計特殊出生率は1.26,人口は8993万人になると見られている。

ちなみに老齢人口率は40.5%(20.8%:2576万人→3646万人)、15~64歳の生産年齢人口率は51.1%(66.1%)、0~14歳の年少人口率は8.4%(13.8%)になる見通しだ。

世界全体で人口が増え続けている。しかし石油は枯渇、森林もどんどん失われている。人々の生活で消費するエネルギーは、太陽と地球からの恵みを超えているのだ。我々は地球の資源を一人占めするのではなく、分かち合って共生する意識を持つことが肝要ではなかろうか。