政民合同会議講演会

2017年9月13日 講師 宮本 雄二 元駐中国特命全権大使・宮本アジア研究所代表

 「多極化世界の到来と日本外交」

トランプ政権の誕生は旧来の米国の理念を全否定し、戦後の欧米中心の国際秩序を再考する必要があるとの認識を世界に突き付けた。中国はいまや経済規模で米国に限りなく迫る勢いを見せており、米国の圧倒的な存在を脅かしつつある。中国は米国をいずれは追い越したいと考えているが、将来的に人口減が見込まれるなかで米国に大きな差をつけることは難しいだろう。今後、インドなどが台頭してくる可能性もある。

米国が世界を牽引する時代は終わりつつあるが、中国にかつて英米が成し遂げたような、世界を牽引するビジョンは見えてこない。中国は新秩序の形成に積極的ではあるが、経済と政治のリベラリズムを推進する国際秩序と、中国の特色である社会主義と共産党支配という国内秩序には矛盾がある。英国のEU離脱、フランスでの新政権の誕生など、多極化時代を迎えるなか、日本も大国に追随する時代も終わり、日米同盟だけに頼らない、新たな構想を練る必要がある。

いま、世界ではこれまでの価値観を否定する勢力が拡大しているが、先の二つの大戦で多大な犠牲を払って人類が成し遂げた“経済と政治のリベラリズム+国際連合”という価値観を否定することは、戦前の「ジャングルの掟」に戻るしかないことを意味する。中国に本気でこの国際秩序を支える気はないだろうが、否定したくてもそれに代わるものをもっていない。

中国国内には難問が山積しているが、将来的にも共産党の統治は続くだろう。中国共産党のシステムを維持するには権力の集中が不可欠であり、習近平は毛沢東のやり方と似た統治方式を模索し、空前の人民解放軍の改革とあわせて反腐敗運動を強化。しかし反腐敗運動では多くを敵に回したことも事実であり、習近平第二期政権は経済の改革ができるかどうかにかかっている。その鍵を握るのは王岐山の去就だ。

中国事情に精通する宮本氏は、中国共産党について「精緻な建物に慣れた日本人には理解しがたいが、大雑把な構造ゆえになかなか倒れないのが中国共産党」とユーモアを交えて解説。中国人の物の見方や考え方などを分析しつつ、「中国自体にビジョンが定まっていない以上、中国の言動に一喜一憂する必要はない」との見方を示した。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。