「アジア会議」2017年4月24日(月) 講師/海野素央 明治大学政治経済学部教授

2017年04月24日
  

「予測不可能なトランプを予測可能にする」

 トランプ大統領就任100日の間に、米国第一主義の定義が、不介入から介入主義に変貌し、人道主義を前面に打ち出すようになった。トランプ大統領の言動は“予測不可能”とされるが、そうあることで、常に相手との交渉を有利に進めようとしているに過ぎず、実際には常に一定の行動パターンが存在する。まず、国境の壁建設、イスラム教徒の入国禁止など、自らアジェンダを設定し、交渉相手に無理難題を押し付ける。いったんは相手をイライラさせながら安心させ、けれども自身の立場は変えることなく、相手を翻弄する。交渉相手を常に翻弄して主導権を握るというのがトランプ氏の交渉スタイルだ。

 安倍首相は自ら進んでこの“トランプループ”に飛び込み、中国の習近平氏もこのループの罠にはまった一人だ。一つの中国に疑問を呈し、相手を翻弄したところで首脳会談に持ち込み、その最中にシリアへの攻撃を行っている。そして北朝鮮の核・ミサイル開発に関して習主席に北に対し一層の圧力をかけるように持ちかけ習主席を動かしている演出を行った。交渉相手を自らのループに引き込み、強いリーダーとして演出する“トランプ劇場”では、常に白人労働者、退役軍人など彼を支持する固定の観客に向け、メキシコ、シリアなどを悪役に仕立て、自身は常にヒーローとして登場する。次に一定の材料が揃ったときにトランプ劇場の幕が開く。

 異文化間コミュニケーションを専門とする海野氏は、研究の一環として2008年、2012年はオバマ陣営、2016年はクリントン陣営に参加し、現地の有権者の戸別訪問を重ね、現地の反応を調査。海野氏は「自分よりも注目を集める人材外し」、ツイッターを駆使したメディアへの発言は「常に強いリーダーとしての演出を過剰に気にしている証左」と指摘。そのほか、日米学生の政治的意識の違い、トランプの天敵の実態、トランプ氏の支持勢力の結束の固さについても詳細に解説。さらに氏の演台の空間の使い方、握手の仕方のうまさなど、コミュニケーションの観点から氏の今後の動向などについて様々に予測した。その後の質疑応答でも活発なやり取りが行われた。