「アジア会議」2017年3月27日(月) 講師/田村秀男 産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員

2017年03月27日
  

「トランプ政権と日米中トライアングルの行方」

 政権発足以降、迷走を続けるトランプ政権。基軸通貨を持つ覇権国である米国としては、ドル安になるほど米国の海外資産から外国の対米資産を差し引いた米国の純負債は減るため、ドル安政策に走りたい誘惑を抑え切れない。大統領就任前からトランプ氏が掲げていたインフラ投資、財政出動、保護貿易、法人税減税はいずれもドル高要因だが、現実にはドル安と貿易不均衡とは無関係であり、さらには米国経済がこれまでと同じやり方で金融覇権を維持できるかは極めて疑わしい。また、インフラ投資、財政出動は米国内の企業の収益率を上げるには理にかなっているが、うまくいくかは別問題だ。

 世界最大の債務国であると同時に対外資産国でもある米国は世界経済の胴元として巨大な収益を得、世界に再分配することで金融覇権を維持してきた。これが従来のウォール街モデルであり、それを支えてきたのが巨額のジャパンマネーであった。中国の資金流出が著しい現在、トランプ政権が日本を重視するのは当然であろう。

 トランプ・ラリーも冷め、いまや米国経済はドル安・円高に向かっている。マーケットの先行きは不透明だが、アベノミクスは一定の効果を上げており、日本経済は安泰だろう。

 田村氏は、「トランプ政権は従来政権と異なる」と前置きしたうえで、政権周辺の経済関係要人の相関図や、リーマンショック以降米国の対中貿易赤字の5割相当が軍事費支出である現状、中国の資金流出と米株価の関連性など、多様なデータを詳細に分析しながらドル安への誘惑に弱い米国経済、金融覇権国として威光に陰りが見えつつある実状などについて紐解いた。また、米国市場と密接な関連性を持つ中国の金融裏ルートについても言及。ドルの裏付けがなくなった人民元の下落が必至であること、それゆえに中国の金融専門家は人民元を国際決済通貨にしようと画策しているが、「横行を許してはならない」と批判。安倍政権に対しては、一定の効果を上げているアベノミクスを評価しつつも、「森友学園問題のような枝葉の問題で政権を揺るがせてはならない」と語った。その後の質疑応答でも活発なやり取りが行われた。