「アジア会議」2016年8月29日(月)  講師/歳川 隆雄 「インサイドライン」編集長

2016年08月29日
  

「安倍超長期政権は果たして可能か?」

 9月に行われる日露首脳会談は前回の首脳会談以上に長時間に及ぶ踏み込んだ内容の会談となるだろう。北方領土問題でどれだけロシア側の譲歩を引き出せるかにも注目したい。安倍総理は手土産としてロシアのエネルギー開発に必要なインフラ整備のための技術支援をはじめ、極東・サハリン州で採掘された天然ガスを電力化して北海道・稚内に高圧直流送電する「パワーブリッジ構想」や、日本の最先端技術を備えた病院建設などを含むロシア人の平均寿命向上計画を用意している。とくに過酷な気候、過度の飲酒習慣により平均寿命が短く、人口減に悩むロシアにとって平均寿命の向上は悲願とも言え、プーチンも大いに乗り気という。日露接近を受け、9月に中国・杭州で行われるG20にあわせた日中首脳会談で中国側が譲歩してくることが予想される。安倍第二次政権発足以来、重点外交政策である「自由と繁栄の弧」の下、就任以来、78カ国に及ぶ外遊はひとえに中国と対等に会話するための対中包囲網形成が目的であった。

 安倍政権の超長期政権は、日本経済、わが国を取り巻く国際情勢、皇室典範の改正、改憲実現など様々な交渉の進捗如何にもよるが、よほどのことがない限り実現するのではないか。安倍総理は節目を大切にする政治家であり、昨年の日米安保の強行採決、12月の日露首脳会談を自身の地元である長州ゆかりの地に決めたのも然り、東京五輪、歴代最長政権も視野に入れ始めたと思われる。

 歳川氏は、安倍政権の外交政策に対し、「巧みな外交術に感心する」と一定の評価を示すとともに、人脈を駆使した独自の情報網により、日露接近に対する米大統領の反応をはじめ、G7伊勢志摩サミットの進行状況、各国首脳の発言や態度など、メディアでは報じられない裏事情を詳細に解説。各国政府の人事や世界で起こる様々な動き、事実をつなぎ合わせて導き出す正確な予測で列席者をうならせた。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。