「政民合同會議」2016年3月7日(月) 講師/富坂聰 拓殖大学海外事情研究所教授

2016年03月07日
  

「混迷を極める世界と日中関係の今後」

 日本と欧米では中国に対する見方が全く異なる。中国株の乱高下で中国経済の崩壊の可能性を示唆する日本のメディアは多いが、多くの欧米の金融機関は中国株乱高下に乗じて利益を得ていた。欧米の中国情報がいかに深く、翻って日本に溢れている中国情報がいかに浅いかの証左だ。
 米中問題にしても二国間だけではなくロシアも含めて考えなくてはならない。クリミア問題を「大きな問題」と捉え、中国に同意を求める米国に対し、煮え切らない態度を取り続けた中国に米国は激怒。「新型大国関係」という呼び方をやめるなど、米国の態度急変に慌てた中国が脱露入米に舵を切り、昨年9月の首脳会議につながった。
 南シナ問題についても日本では一触即発との見方が強いが、米中の見方は真逆だ。そもそも南シナ海は近年にわかに軍事化したわけではない。日本の見方は安保上の問題でいつか米中が対立し、親密な経済関係がそれを押しとどめるという見方だが、中国は、米国が南シナ海問題で騒ぎ立てるのは中国への経済封じ込めが目的と考えている。
 米中首脳会談で中国は西側の制裁を取り払う意味で米中投資協定に大きな期待を寄せていたが、結局進展はなかった。中国にとっては大きな打撃となったに違いない。ここから先は推測の域を出ないが、米国政府のスポンサーがウォール街からシリコンバレーに代わり、米国が対中強硬路線に転じ、次世代の産業を巡る米中の対立があったのではないか。中国は高度経済成長後の次の展開を考え、太陽光パネルに望みを託していたが、EUの厳しい制裁に阻まれ諦めた経緯がある。今後、次のターゲットである人工知能を巡って米中の激しい対立が起こることも予想される。
 日本は世界情勢を自分たちの価値観に基づいて認識しようとするが、世界は利益で動いている。永遠の友好国はないことを肝に銘ずるべきだ。
 富坂氏は、「専門外」としながらも人工知能時代の様々なシナリオについて「完全自動運転などに活用され、そうなれば全ての産業はビッグデータを持っているところが制することとなり、自動車産業も下請けに転じる時代が来るかもしれない」などと予測。中国での日本の存在感が失われている現状を説き、スマートフォン市場に乗り遅れた反省を踏まえ、「次のイノベーションに乗り遅れたらさらに大変なことになる」と日本企業への危機感を示した。