「政民合同會議」2016年11月8日(火) 講師/小原凡司 東京財団政策研究所 調整ディレクター兼研究員

2016年11月08日
  

「中国強硬姿勢の背景」

 米国が世界の警察官であることを辞め、国内問題を重視しようとしている時代に、思うように経済発展が進まないのは米国主体の国際秩序に問題があると考える中国は、武力を行使してでも国際秩序を変えたいと考えており、それが南シナ海、東シナ海での強硬姿勢へとつながっている。

 国のやることを善悪で判断するのは非常に危険な考えであり、中国の行動はときに滑稽で、国際ルールを無視しているところはあるが、あくまで自国の利益を追求している観点からその行動を注意深く読み解くべきだ。

 わが国は日米同盟を最重要視しているが、日米同盟も二国間だけでなく、米国を中心とする同盟のネットワーク化を目指していく必要がある。自国の利益にどう結び付くかという観点でしか国際ルールに関心がない東南アジア諸国や中国に、「国際的ルールを守る」という原則の主張は響かない。そうした国々を各国の利益につなげ、国際的なルールに巻き込んでいくには、経済を主体とした新たな枠組みを構築することが不可欠だ。米中対峙のイメージから脱却し、日本も経済的な協力を通じて東南アジアを中心とした経済ベースの安全保障の枠組みづくりに尽力すべきだ。それは新たな巨大市場の誕生ともなるだろう。

 小原氏は、中国外交の稚拙さ、国内の権力闘争、中国の歴代指導者がいまだ軍を掌握したことがない背景、強まる習近平の独裁色などについて詳細に解説。「中国の一路一帯構想が必ずしも軍事衝突に結びつくわけではない」としながらも、中国が主敵を米国と断言している現状を踏まえ、日本が経済力を強め、世界での影響力、発言力を強くすることの必要性、これ以上の軍拡が不可能ななかで、これまでの西洋型民主主義に訴えるのではなく、経済を主体とした東南アジア、中国も巻き込んだ新たな国際ルールづくりの必要性を強く訴えた。

 このほか、フィリピンのドゥテルテ大統領の発言は、東南アジアがこれまで明らかにしてこなかった本音の部分を代弁していると指摘。中国は東南アジアに多額の支援を行っているが、フィリピンには効果がなく、中国がフィリピンへ警戒感を強める一方、フィリピンが反米を明らかにしていることでスカボロー礁の安定が保たれている現状についても言及した。