政民合同会議講演会

2014年8月6日 講師/朱 建栄 東洋学園大学教授

「習近平時代の中国の内政外交」
日本の中国分析には感情的な部分が多く、中国は全世界で悪者であり、いずれ崩壊するという報道一色に染まっている。日本の中国分析の多くが上海閥、石油閥などを軸に語られることが多いが、実は中国の閥はそれほど強力なものではなく、閥を根拠に政治を語るべきではない。習近平体制になって1年半経つが、権力掌握は同時期の江沢民、胡錦濤よりも早い。年齢制限、三選禁止をはじめとする指導体制、権力構図の変化、民衆の期待感などが権力の確立を後押しし、習近平は党、軍、地方のトップの不正を容赦なく追及するに至った。

60数目にも及ぶ中国の大改革を掲げた習近平の前途は多難だが、鄧小平路線を越えて中国の難題に取り組むことで、中国ははじめて経済、社会面で先進国の仲間入りを果たすことができるようになるだろう。政府高官の資産公開、子息の長期海外渡航禁止などもすでに議題にのぼっている。食品安全チェックの仕組みも強化されるなど、変化の兆しは至るところに見てとれる。先の大手外資系企業の期限切れ食材の事件も、むしろ外資にもメスを入れた国内による摘発という事実に注目したい。

経済発展を最優先させた時代を経て、格差の是正、社会保障の構築に取り組む中国だが、昨年末までに全中国の医療保険制度ができ、最低限の保障が受けられるようになったことも評価すべき大きな変化だ。経済成長によって発展の基盤となる中間層も急速に拡大、彼らが主張し始めた権利意識が中国社会の近代化を突き動かしている。習近平時代に社会の民主化にある程度取り組むことは余儀なくされるが、複数政党制、世論の自由化は次の指導者の議題となるだろう。

中国経済の実態はいまや米国を超えた。平均年率7%以上の成長は今後も続くだろう。

習近平は国際協調を掲げながら、自国の領土については妥協を許さないなど矛盾した二つの側面がある。東シナ、南シナ海の外交の根底には米国による対中包囲網打破がある。

中国が尖閣諸島を攻めることはない。空爆だけで全滅させられる小さな島を占拠する意味はなく、国際経済に依存している中国が世界的に経済制裁を受けることになればそれこそ中国経済の崩壊につながる。日本は単に中国脅威論を掲げるだけでなく、自信を持って中国に対応すべきだ。

朱氏は、日本を“繊細な盆栽”、中国を“荒れる大木”にたとえ、日中の相互理解を深める必要性を強く訴えた。