政民合同会議講演会

2014年5月9日 講師/宮家邦彦 元外務官僚、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

「ウクライナをめぐる日本と世界の政治経済情勢の行方」
旧ソ連崩壊後、西側はEU、NATOを拡大し、ロシアの民主化を推進し、ロシアの封じ込めを行ってきた。一方の米国も、不戦主義を掲げるオバマ政権下で大国としての威信が失われつつある。今回のクリミアの事件は、米の不介入主義、凋落を見越し、これまで抑えつけられてきたロシアがNATO、米へ挑戦したともいえる。ウクライナの中立化を目論むロシアが1994年12月に米英露間で締結したブダペスト覚書を破ることも意味する。

こうしたロマネフ王朝の復活ともいえるロシアの動きは、今後、さらに欧州、中東に大きな影響を及ぼすことは確実だ。ウクライナも然り、いまやスコットランドも独立を主張し始めている。欧州の歴史問題は日本の比ではないほど根深い。

米国は遺憾を示しても軍事介入することはないだろう。米国はかつて中東に介入している間に中国が台頭したことに焦りを感じ、アジアにシフトし、本来の影響力を回復させようとしている。しかし、いずれ米国主導の安定装置は機能しなくなり、中東情勢もさらに不安定になる。

ロシアと同様、中国でも民族主義が復活しつつある。いまの中国はもはや共産党ではない。民主主義が根付き、ナショナリズムをコントロールする力がある日本と異なり、中国にはその機能はない。

中国にとって、もっとも豊かで脆弱な核心的地域は太平洋側の沿岸地域。西太平洋上の覇権を狙う中国は航空母艦の建設を進めている。日本は東アジアにおけるパワーシフトを生き延びるために、さらなるコーストガードの強化、ベトナム、英国との連携などなすべきことは多い。

中国は右肩上がりの時代は終わり、利益を再分配する余力は残っていない。石油閥などに対する既存の利益集団の撲滅運動という名目で利益の再分配を続けるしかない。総裁選、衆参両院選挙に勝利して選ばれたわが国の安倍首相と異なり、習近平には力がなく、外交どころではない。反日政策で譲歩などすれば足元をすくわれかねず、外交どころではないのが実状だ。

宮家氏は、図表でわかりやすく地理的、歴史的背景から各国の思惑、今後の展開を予想。中国の今後、日本のとるべき道についても様々な仮説を述べた。また、北朝鮮を中小企業にたとえるなど、ユーモアとウィットに富んだ内容に会場から笑いが絶えなかった