政民合同会議講演会

2014年2月5日 講師/田中 均 元外務新議員 日本総合研究所国際戦略研究所理事長

「東アジア外交の考え方」
日本はこれまで戦後処理問題を総括してこなかったことから、世界第二の経済大国になるにつれ、靖国問題や歴史問題が外交課題となっていった。総理の靖国参拝や慰安婦問題、南京大虐殺などに関連する最近の発言は近隣諸国だけでなく日米関係にも影響を及ぼしている。歴史認識を変えていくことに伴う国益上のリスクを改めて認識する必要がある。

中韓の経済成長に伴い、東アジア地域において日中韓の力関係が変わってきたこと及び関係国の国内のナショナリズムの高揚が領土問題を顕在化させた。今後、中国の経済成長が鈍化したとしても日中間の経済格差はますます拡大する。鄧小平の「力をためるまで低姿勢」政策は最早存在せず、唯一対米関係で残るのみ。日米安保条約は東アジアで紛争を起こさないためにも不可欠だ。

中国は米中間で太平洋の勢力分割を考えている。中国の核心的利益は台湾、チベットにとどまらず、いまや南シナ海、東シナ海と拡大の一途を続け、いわゆる米中の新型の大国関係の概念は到底日本には受け入れられない。

しかしいまの日本政府は安全保障面に偏り、外交面での対中アプローチが希薄であり、中国をめぐる日米の政策の距離は広がるばかりだ。日米間で一刻も早い政策調整をしなければ手遅れになる。

歴史問題、領土問題はそれぞれの国のナショナリズム、国内問題と密接に関係している。中国は日本に対して妥協すれば中国国民を満足させることができず、社会問題に火が点く。そうなれば国内の権力闘争が抑えられなくなる。米もGDPの4%を軍事費に費やす時代は終わり、かつての強いアメリカ的世界観から離れ、国内の再建を課題とする内向きの政策に転じつつある。

日本は、ASEANや欧州との協力関係も強化するとともに、安全保障で日米の役割分担を明確にし、中国をより建設的な存在にするよう努めるべきだ。集団的自衛権に関するいまの憲法解釈を変える必要はあるが、合理的範囲にとどめるべきである。

併せて中国を含めた信頼醸成措置、自由貿易体制の確立、環境、エネルギー問題での協力体制をつくること語り実現していくことが東アジアの安定につながる。

田中氏は「外交官とは現実を客観的に眺めて日本の国益を考えるリアリスト」とし、自身の体験から過去の様々な対外交渉の背景や裏話についても語った。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。