政民合同会議講演会

2014年10月6日 講師/茂田 宏 元駐イスラエル大使

「最近の国際情勢と日本外交」

親密だったロシアとウクライナが対立関係になったのはプーチンの考え方、ウクライナの成り立ちと政治の在り方に起因する。欧米の協調のなかでロシアを考えたいエリツィンと異なり、かつての強大なロシアへの郷愁を持つプーチンは、ユーラシア連合という小型ソ連邦をつくって再興したい。この構想の成功はウクライナ如何による。
ウクライナは独立後、政治経済的に混乱。国家としての統一性に欠け、いまやロシアとの所得水準の差は3倍に拡大した。欧州接近派と親ロ派が拮抗するウクライナで、クリミアを留めるためにプーチンは国際法を侵犯し、力によって併合した。ロシア国内ではクリミア併合によってプーチンの支持率は80%超えを続け、ナショナリズムが暴走。
今後、欧米とロシアの制裁合戦になろうが、プーチンがいる限り欧米とロシアの対立は解消できないだろう。新たな冷戦となる状況もありうるが、いまのロシアに冷戦を戦い抜く国力はない。ロシア経済の先行きは暗い。日本は欧米のロシアへの制裁時にはG7と協調すべき。領土返還の淡い期待に踊らされることなく、日本は国際規範重視の立場を崩してはいけない。
シリアでの反アサド闘争で力をつけたイスラム国(ISIS)は欧米人を人質に巨額の身代金を得ることで豊富な資金と軍事力を持つ。内戦、革命状況のなかでは狂信的思想が強まる。ISISはアサド政権を倒すだけでなくシリア、レバノン、イラクなど中東地域の政治地図を塗り替えようとしている。米国はISISを過小評価し、イラク軍を過大評価している。オバマは地域諸国、NATOとの連合で立ち向かうというが、地上軍の出動なしで対応できるのかは疑問だ。スピード感をもって対応しなければ大変な怪物が成長してしまう。
わが国は今後、米国のアジア重視路線、中露同盟に注意しておかねばならない。
茂田氏は、クリミア問題、イスラム国について歴史的な背景を詳細に解説。このほか、日中、日韓関係について、中韓の理不尽さを批判するとともに、早急な首脳会談の必要性を強く訴えた。集団自衛権については、「かつてはアジア唯一の工業先進国である日本が軍事大国にならないことがアジアの平和のために重要と考えられていたが、時代は大きく変わった。日教組は教え子を戦場に送るなと主張してきたが、いまや戦場が日本に来る状況だ」と尖閣周辺で日常的に領海領空が侵犯されている現状を指摘。集団的自衛権の限定的行使を評価した。同時に安保政策の大転換が起きたとも指摘。片務的な条約である日米安保の脆弱性を懸念した。