アジア会議講演会

2013年11月18日 講師/富坂 聰  ジャーナリスト

「自らの首を絞める中国外交の裏側」
大学新卒の内定率が3割程度に過ぎず、高学歴で低収入に甘んずる蟻族とよばれる若者たちや過酷な労働環境で働かざるをえない多くの労働者がいる一方、賄賂で私服を肥やす政府高官は多く、中国社会の格差は増すばかりだ。

中国では社会に不満を持ち、ネットを通じて発信する動きが活発化。民衆の不満が鬱積しつつある。最近ではネットで批判された官僚の多くが謝罪、服役に追い込まれ、水質汚染が進む川では責任者が泳いで水質に問題がないことを証明させられるなど、共産党の民意への怯えが顕著だ。

「民生重視」を掲げる習近平政権は汚職の取り締まりや贅沢禁止令など、庶民の不満を和らげようと画策するが、富の分配がうまくいっていないという肝心な事実にはメスが入れられていない。

しかも、もはや中国経済にかつてのように社会を牽引する力はない。中国経済は雇用、国を代表するブランド、個人消費の不振で、新機軸もみつからず、迷走状態が続いている。

世界の工場として投資が集まり、国内の不動産が活況だった幸せな15年を経て、中国は準備が整う前に成熟社会を迎えてしまった。

年金も医療保障もなく、個人消費の伸びも期待できない。そうした中で日本とのこれ以上の摩擦は中国にダメージを与えるだろう。本音では日本と和解したいが、問題の多くが歴史問題と絡められ、国民に言い訳がたたず、解決は難しくなっている。習近平の「環境が整えば」という発言は、世論をどうコントロールするか苦慮している裏返しでもある。

中国はいくつかの部分で短期と長期のねじれがあり、長期的な戦略を持ちたくても短期的な議題が多すぎて着手できないのが実情だ。中国は日本が思っている以上にばらばらの国であり、中央政府が約束しても地方が守らないということは今後も起こってくる。日本としては中国が多くの課題を抱えたまま余裕のない政権になっていくことを踏まえ、同じ土俵に立つことは避けるべきである。

80年代から中国社会を見てきたという富坂氏。最近の中国社会のトピックを、具体的な写真を用いてユーモラスにその実情を解説。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。