アジア会議講演会

2012年7月23日 講師/石 平 拓殖大学客員教授  

「中国の政治・経済の行方を占う」

中国経済の成長率は2010年の第一四半期の11.9%をピークに減速の一途を辿っている。これは中国政府が2010年秋からインフレ対策のため国内で実施してきた金融引き締め政策によるところが大きい。金融引き締め策によって鉄道省の公共投資は昨年同期比で4割減、不動産販売面積も大幅に減少。貸し渋りによる中小企業の倒産が相次ぎ、鉄鋼、セメント業界など国有企業の利益も軒並み深刻な経営状況に陥っている。中国経済は今後数年困難が続くだろう。

中国の経済成長の原動力は対外輸出と公共投資であった。反面、中国の製造業は過剰な設備投資によって供給過剰となっている。政府の成長戦略が結果的に中国経済の減速を生み出したことはまさに歴史の皮肉と言えよう。

政府がさらに大型財政出動を行えばインフレ率は上昇し、金融引き締め策を取らざるをえない。他国が2~3%の経済成長で国が安定しているのに対し、中国は貧富の格差が激しく、10%以上の経済成長が続いているときですら国内で暴動が絶えなかった。中国人民共和国の歴史は毛沢東、鄧小平時代の二つに分けることができる。鄧小平は改革、解放をもたらしたが、一方で貧富の格差が拡大。いまでは誰もが平等に貧しく幸せだった毛沢東時代を懐かしむ声も多く、庶民の間で革命歌が流行っている。

今中国経済には回復の決め手がない。中国経済がさらに減速して低成長期が長く続けば雇用状況、人々の生活が悪化し、さらに貧困層が増える。中国は衰退と困難の時代に突入するといっても過言ではない

貧富の改革を是正するには政治改革しかないが、政権内部で潰される可能性も高い。中国が今後、いかに対外的な国際危機を作り出して国民の目を外に向けさせ、改革で困難を乗り越えるか、2012年がターニングポイントになるだろう。

その後の質疑応答では、日本の対中姿勢などについて質問が及び、「外交は国益を賭ける真剣勝負であるべきだが、日本には国益という概念がなく、外交にすらなっていない」「戦後日本で国家意識が希薄になった原因は日本国憲法にある」と日本の姿勢を厳しく批判した。