アジア会議講演会

2012年6月18日  講師/宮家邦彦 元外務官僚

「尖閣諸島、南シナ海をめぐる
日本政府と外務省の対応」

国家の利益は、その地域の国際情勢、地域情勢、内政・二国間関係などの政治情勢に依存する。13億の民を養うべく、沿岸地域に資本と労働力、技術が集中させている中国が重要視している西太平洋。中国が太平洋を目指す限り、沖縄周辺を通過せざるをえず、そこに立ちはだかるのが日米同盟だ。西太平洋は日中の中東産油地帯へのシーレーンの重なる地域であり、中国にとっては豊かだが脆弱な地域でもある。

中国の出方を見るには中国独特の国家安全保障観を知る必要がある。現在の中国の軍拡は、経済成長のため、2004年に人民解放軍に自国の領域を超えた役割を認めたドクトリン「新世紀新段階我軍歴史使命」に則ったものだ。かつて欧米・日本から受けたアヘン戦争以来の屈辱を晴らし、人口高齢化の恐怖を克服し、中国共産党の指導を継続させるため、という名目もあるが、人民解放軍の目的が、かつての中華人民共和国の領土を守るという国益の概念を超え、いまや海洋、宇宙、サイバー空間にまで拡大してしまっている。

尖閣問題は、森羅万象、文化ですら政治と捉える中国を相手に、政治的な解決の可能性を全く見出せなかった民主党政権下だからこそ起きた。日本の政権交代以降、日中の政治的パイプは途切れてしまったことによる。

中国は時間をかけて既成事実を積み重ね、戦わずして実効支配にもっていきたいというのが本音だ。政治的に共鳴できるところのない日中関係は本質的に極めて脆弱なものであり、日中外交の9割は内政問題で、中国国内での面子がつぶれれば理不尽な行動にでてくるだろう。誇り高い一方、自国の評判を気にする中国問題は、二国間でなく多国間で処理すべきだ。

宮家氏は、中国がどのように日米、中東、インドを見ているか、また、それに対するアメリカの出方などを、豊富な資料を用いてユニークな方法で分析。中国人の本質を解明し、中国の弱点も指摘するとともに、「尖閣諸島などの一部の現象で対症療法的に考えるのではなく、対中東、東アジアを含め、グローバルに捉えるべき」と主張した。

その後の質疑応答でも、中国の空母の実際の戦闘能力や日本が取るべき戦略など、活発なやりとりが行われた。