アジア会議講演会

2012年5月23日  講師/林 建良 「台湾の声」編集長

「馬英九政権の中国化と台湾の行方」

前任期中、中国との関係改善によって台湾経済に貢献したと主張し、再選を果たした馬英九総統だが、わずか4カ月間で支持率は急落。物価上昇や給与削減、中国人労働者の増加などに対する庶民の不満が高まっていることを反映したものだ。馬氏の掲げる政策は中国一辺倒であり、前任期中に一気に台湾の中国化が進んだことに国民の危機感は高まっている。

両岸経済協力枠組会議(ECFA)締結後、台湾の製造業の製造拠点が中国に移り、技術移転が進み、産業の空洞化が進んだ。失業率は上がり、貧富の差が拡大するなど、ECFAは台湾にマイナス成長をもたらした。GDPが増えたが失業率も増加、賃金は減少するという矛盾が台湾で起こっている。経済規模の異なる国同士の経済交流は、小規模な国の経済の空洞化を加速することはEUの例でも十分に証明されている。

安全保障面では、中国との関係は安定した。しかし、その実態は、台湾が中国に対して闘う前に全面降伏したと同様の、奴隷的平和でしかない。台湾軍の士気低下が指摘されるなか、2013年から徴兵制の廃止も決まった。台湾は国を守る意志を自ら放棄したのだ。いまや中台の仮想敵国は日本だ。

馬政権の二期目は、米中日の経済動向も踏まえ、一期目よりも混乱することが予想される。馬総統は中国との平和協定締結も画策している。香港返還前と同様、すでに台湾国内に中国を代表する事務所が設置されるなど、

中国が直接台湾人を管理する布石が敷かれ始めている。

林氏は、中台の軍事的平和協定の進展に危機感を強め、日本版台湾関係法の必要性を強く訴えた。台湾の主要メディアでは中国資本の影響力が強く、言論の自由が制限されていることにも言及。「日本の出来事を逐一報道するなど、台湾では日本に対する関心が非常に高く、心の距離が近い」「台湾の将来は日本の運命と直結している。日本で、法的に台湾を認める動きがあることを示すだけでも、中国の影響力は大きく低下する」と力強く語った。