アジア会議講演会

2010年8月23日 講師/武貞 秀士 防衛省防衛研究所総括研究官

「哨戒艦事件以後の朝鮮半島情勢」
韓国の哨戒艦事件は、北朝鮮の戦略や内情、米韓同盟関係など日本にとっても様々なことを示唆する象徴的な事件だった。北朝鮮は核兵器開発への自信を強め、昨年から通常戦力の強化を急速に進めてきた。哨戒艦事件は北が数ヵ月かけて準備し、韓国の北方軽視の国防の隙を衝いたもので、韓国にとっては全く想定外の出来事であった。

一方、矛盾するようだが北は米国との対話の道を模索してもいる。北に対米全面戦争の考えはなく、核を米国が南北戦争に介入させない抑止力と捉えている。その傾向は2009年に弾道ミサイル、核実験をしてから顕著だ。さらに中朝関係は緊密化し、北朝鮮は中国経済に従属しているため、北朝鮮の命運は中国が握っていることも忘れてはならない。

米韓同盟が強化されていることにも注目だ。7月の米韓軍事演習では新鋭兵器を使用するなど、米韓同盟が地域の要として浮上した。米国は、中国との協議よりも米韓同盟を緊密にすることで極東アジアの安定をはかる方法を模索し始めた。

中国はすでに北朝鮮に対して鉄鉱山をはじめとして莫大な投資を行っており、北朝鮮の有事の際には、あらゆる名目をつけて介入するシナリオを考えているとみられる。しかしその一方で、韓中の経済関係はすでに北東アジアを動かすほどの影響力があり、中国が北に介入すれば韓国の民族意識を刺激し、韓中関係が破綻するリスクもある。

現在、北朝鮮国内では、金正日総書記の後継者問題をはじめ、大量破壊兵器の実験、憲法改正など、前例の少ない出来事がめまぐるしく起こっている。こうした北朝鮮の変化に、韓国と中国の対立と牽制、米中間の駆け引き、それに北朝鮮の内部変化が絡みあう複雑な様相が浮上するのではないか。

武貞氏は、北朝鮮の公式報道の読み方をはじめ、一つひとつの事象を詳細に分析し、外交現場での関係者の行動も踏まえ、各国の情勢を予測。その深い洞察力に場内はうなった。その後の質疑応答でも活発な論議が行われ、密度の濃い講演内容となった。

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