主張

約束

  会社経営する知人が最近職員を募集した。彼が驚き顔で言うには、応募者と面接日を約束したものの、約半数が何の連絡もなく会場に現れなかったらしい。それも、一流大学、大学院卒の人たちにそういう傾向があったそうだ。私はたまたまではないかと思い、何人かの知人に尋ねてみたところ、なんと他の会社でも同じ経験をしていた。日本の若者たちはいったい「約束」に対してどう考えているのか、との思いを強く抱いた。  わが国では古くから「約束」に関連した諺が多く使われてきた。「武士に二言はない」とか「男子の一言、金鉄の如し」など、いずれも約束したことは何がなんでも守るということを言っている。

日本の鉄道の発着時刻は世界に例をみない正確さである。また日本企業は注文通りの品物を寸部の狂いもなく作り、決められた期日にきちんと顧客に届けることで高度経済成長を成し遂げてきた。いずれも約束を守る精神が根底にあったからこそである。 約束はまた信用に通じる。約束手形で期日を過ぎれば即、倒産ということになる。それほど約束というものは重い。家庭のごたごたも解決できないで会社経営は上手くいかないと、よく言われる。同じように、小さな約束が守れない人は何事も永続きせず事業もうまくいかない。約束とは人間の基本的な信用の始まりだと言える。つまり、人間とは信用の積み重ねであり、その結果物として成功というご褒美がある。かの本田宗一郎氏は「信用とは、人に好かれること、約束を守ること、儲けさせることにつきる」と言ったと聞く。政治の世界で有名なのは小沢一郎氏である。ひとたび約束すればどんなことがあっても守る人だと弊会代表から聞いている。弊会との打ち合わせでも小沢氏は先に約束したなら厳密に守る人であった。いま検察審議会で難しい立場にいるが、きっと小沢氏はどんな事態になろうとも国民との約束、先約を守らねばならぬと考えているに違いない。小沢氏はそういう性格の持ち主だと聞いている。  実業界で身近な例をあげると、ライフコーポレーション会長の清水信次氏は、弊会の講演会に出席で申し込んだら、遅刻も早退もない。弊会代表に聞くと、清水氏はどんな小さなことでも、約束はきちんと守る人生を歩んでこられたと言っていた。  前述したように、かつて日本人の美徳とされてきたのは、「約束を守る」几帳面さにある。約束した時間に1分でも遅れたら、次回から口も利いてくれないという人が昔は多かった。みな10分前、15分前には必ず約束場所に到着していたものだ。しかし、いまでは車が混んでいたとか、前の仕事が立て込んでいたのを理由に約束時間が守れないという若者が多いのではないか。  さらに最近の傾向として、約束相手があるにも拘わらずこちらの方が大事と簡単に先約を変えてしまうケースも目立つ。いまこそ、身近なところから約束を実践していくことに専念したいと思う昨今である。